夜に駆けるをアレンジャー目線で聴いてみた【ブラブロアカペラ】
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本日は、ここ最近SNSやYOUTUBEで話題の「夜に駆ける/YOASOBI」をアレンジャー目線で聞いてみたという内容でお届けしたいと思います。
夜に駆けるとは
YOASOBI「夜に駆ける」 Official Music Video
2020年の大ヒットソング
音楽ユニットYOASOBIの楽曲であり投稿サイト音楽にするユニット「YOASOBI」としての初作品。小説投稿サイト「monogatary.com」に投稿された星野舞夜の小説『タナトスの誘惑』を原作として作詞・作曲されました。
公開から約7カ月でYOUTUBE再生回数2000万回を突破。LINEMUSICの月間ランキングで1位となりYOASOBIの代表曲となりました。ちなみに私が人生で初めてYOUTUBEに出した動画は再生回数100回でした笑
YOASOBI
ボカロP(ボーカロイドプロデューサー)のAyaseさんとシンガーソングライターikura(幾田りら)による2人組ユニットです。2019年のデビューとなりました。Ayaseさんがデビューしたのは2018年にニコニコ動画とYOUTUBEに「先天性アサルトガール」を投稿したのがデビューでした
タナトスの誘惑
現役大学生が書いた小説であり、上記の通り小説サイトに投稿されたものでした。大枠の内容については下記にまとめます
①飛び降り自殺をはかる「彼女」を止めようと揺れる主人公
②死神が見える人がいる
③見た人により姿を変える
④死神は見た人が一番魅力的な姿をしている
このような内容をもとに、今回の曲は作られているということを抑えます。”タナトス”はギリシャ語で「死神」という意味です。「死を望む彼女」「死を止めようとする彼氏」の2つの心について描かれています。死を望む際に現れるのが死神であり、その姿は理想的な姿をしているということです。
さて、このような内容から続いて曲についてみていきましょう。
「夜を駆ける」の曲を解析
特徴的な疾走感
初めて聞いたときに最初に感じたのは「疾走感」です。一定のビートをベースにしてベースとピアノによって疾走感を表現してますね。そこに”透明感”のあるメロディーが入ることによって、さらさら~と流れるように曲が鳴っていきますねぇー。注目すべき箇所としては、ボーカル・ベースの区切りとピアノ・シンセの伴奏の絡み合いだと思います。例えば、1番Aメロに関してはベースがバリバリに細かくなってボーカルを支えています。Bメロに入った瞬間に、ピアノが登場。ベースはメロと合わせるようになり、疾走感をピアノが交代して表現してますね。2番になるとラップが入ってくるので、そこはさらに疾走感を出すためにシンセ音が鳴りまくりですね。一定のビートの上で、高低差のある音が鳴ると疾走感を出すことができます。これは、以前ブログで書いた寺川ベースでも同じことが言えますね。
Just The Two of us進行
続いてコードを見ていきます。キーはEbメジャーですね。
沈むように・・・
|A♭M7 B♭7|Gm7 Cm7
こちらは王道進行を使用していますね。安定的な進行であり、多くの楽曲で活用される進行となっています。この曲の恐ろしいところは、ここからAメロに入っていきますが、ちょくちょく出てくるおしゃれコード且つ進行です。Aメロを見てみましょう。
さよなら・・・・
|A♭M7 G7|Cm7 B♭m7 E♭7
このG7ですが、Ⅲ7のセカンドリードミナントが使用されています。おしゃれ進行の定番、Just The Two Of Us進行ですね。ここにセカンダリードミナントを用いることで、一瞬どこかに行ってしまう”浮遊感”が生まれます。音楽的に言えば、G7(Ⅲ7)からCm7(Ⅵm7)への平行調ドミナントモーションと、Bbm7(Ⅴm7)→Eb7(Ⅰ7)のツー・ファイブ・ワンによって際立ちがでます。一回浮いたと思ったらいつの間にか安定に戻ってたみたいな感じですね。「だけだ」「すべてが」「ごしに」などにⅢ7(セカンドリードミナント)が活用されています。この連発半端ないww
パッシングディミニッシュ
「ありきたりな喜びきっと」を聞くと、どんどん上っていく感覚になりますが、途中でまた道に外れた感になります。ここには一瞬メロにナチュラルが入ってくることによる影響が出てきます。G7/Bのオンコードにすることによって、ベースラインはAb→Bb→B→Cとなり滑らかになります。これにより進行をスムーズにできます。また、Bdim(G7/B)はセカンダリードミナントと似たような感覚であるため、どことなく浮遊感があるわけです。
壮絶なサビ回し
はい、私の興奮ポイントです。先ほどのⅢ7(セカンドリードミナント)をサビの回しでも活用しています。YOASOBIさんの曲はサビを繰り返すことが多いんですが、この曲ではⅢ7をうまく活用してますねぇ。「僕の手をつかんでほら~」の「ほら」がG7(Ⅲ7)となっています。そこからもう一度サビに入るという、一回浮かせてからまた戻ってくるということがポイントです。
2回の転調
興奮ポイントその2です笑 落ちサビに転調を用いることですね。EbからDメジャーの半音転調。これなかなか珍しいです。曲の雰囲気はガラッと変わります。そしてラストサビはDメジャーから短三度上のFメジャーに転調しています。短三度転調はよく使います。非常に転調しやすい方法ですが、1回目の転調で「あれ?」と思わせて最後に必殺技を持ってくるみたいなズルい曲ですね(いい意味で)
結論1度下がって3度上がるので、2度の転調となるわけです。
それではこれらをもとにアレンジの考察に入ります。
アレンジにおける考察
曲全体の把握
このような一定のビートの曲において、アレンジでありがちなのは「飽き」です。アレンジャーにとって最も課題となるところですね(まぁフルでアレンジすると飽きがつきもののように感じますが・・・)。
そこで1番と2番の雰囲気を見ましょう。特に1番のA、Bメロと2番のA、Bメロですね。1番と比較して2番はラップなども取り入れながら曲の雰囲気を変えています。歌詞を見ると1番は自殺しようとする彼女を説得する彼氏を描いてますが、2番になると彼氏の心情も乱れ始めてグチャグチャになってきています。その雰囲気がラップに現れているのだと思います。この差をフルアレンジでどのように出すのかがポイントになると思います。
ユニゾンを活用
大事な歌詞の部分ではユニゾンを使うと際立ちます。「ありきたりな~」などでユニゾンを使うと、サビに向かう感じが出ていいと思います。また、メロが高音なので低音(3rd、Bass)が下でユニゾンで支えると面白いと思います。曲のストーリーで「彼女」「彼氏」が出てくるように、男女の関係性をユニゾンで表現してもいいですね。
早希さんとShimo-Renさんの動画を拝見しましたが、すごくアレンジにこだわりが感じられましたし、曲の特徴を見事にとらえたアレンジでした。
夜に駆ける / YOASOBI ( A cappella covered by 早希 × Shimo-Ren )
◆ここがすごい!
・introからAメロに向けてPerで勢いをつける
・Aメロのベースラインを見事に表現
・「ありきたりな~」を字ハモで丁寧に表現
・サビ前で一回落として「さわが~」を強調
・サビ回しをコーラスを重ねることで表現
・1番から2番への間奏がすごいww
・2番の歌詞に合わせてのリズムチェンジ
・落ちサビの転調を曲の雰囲気に合わせた男女表現
・ラスサビはシンプル!
→転調がすでにラスサビ感を出してくれているので
PVに合わせて赤色と青色の服装で揃えるのもさすがです。
もうこの動画好きすぎる
”夜に駆ける”はなぜ人気になったのだろう
きっかけはTikTokを基点に人気が広がったようですね。
ボカロPのAyaseさんが下記のようにコメントで述べてました。
「ボーカロイドのシーンは閉鎖的なところもある。だからこそYOASOBIでは、J-popや洋楽を聞いている人ともつながりたいと思っていた」
若年層をターゲットにしてボカロを普及させるという点において成功したからこそ、ここまでの人気を作ることができたのだと思いますし、新型コロナウイルスによる外出自粛という背景もあり、SNSが活発的だったからこそ注目を浴びたのかなと思います。今年流行した音楽の香水/瑛人もTikTokがきっかけで大ヒットしたようです。
ただ、表面は非常にシンプルな曲でも、よくよく見ていくと曲の中にもたくさんの工夫が成されていることにプロの実力を感じましたね。アレンジをすると非常に面白い曲なのではないかと感じました。
YOASOBIの曲は、「あの夢をなぞって」という曲も非常に人気です。この曲も面白さ満点の曲なのでぜひ聞いてみてください。
YOASOBI「あの夢をなぞって」 Official Music Video
それでは