
この記事は、「アカペラアドベントカレンダー2021」の1日目の記事です。
◆アカペラアドベントカレンダー2021
media.acappeller.jp
2009年、大学1年生の春にアカペラを始めました。
現在31歳の私は、社会人になった今でもアカペラを続け、楽譜を書いています。これまで約150本近くの楽譜に触れ、所属バンド以外からの、楽譜作成のご依頼をいただくことも増えてきました。
ところで、
皆さんは、アカペラの楽譜を制作したことがありますか?
「音楽理論がわからないとアレンジできない」
「アレンジをやる時間がない」
「アレンジはやったことあるけど、挫折した」
アカペラのアレンジ楽しいよ!アレンジした方が勉強になるよ!
と言われることも多いと思います。
ただ、タイトルにも書いたように、
私にとってアカペラアレンジは「ストレスの連続」でした。
そう、13年間です。
でも、改めて伝えたいことは、
「アレンジャーをやっていてよかった」ということです。
そして、たくさんの仲間に支えてきてもらえてたなということです。
クリスマスの前に、こんなテンションのブログどうなの?って思うかもしれません。久々のアカペラに関するブログなので、思いのままに書きたいと思います。
大学生から学び始めた音楽理論

先に、私がアカペラアレンジャーになったきっかけを話します。
以前のブログでも触れていますが、私は大学1年生まで音楽の知識を身につけていませんでした。
kinoko1629.hatenablog.com
むしろ、この世から音符が消えてほしいと何度も思いました。大学1年生のときに、アカペラをはじめて2ヶ月くらいで辞めようと思ったことがあります。その背景は、「ボイスパーカッションにも楽譜があるのかよ」と思ったからです。私はそれほど楽譜が嫌いでした。
ただ、嫌いと言っても仕方ないので、とりあえず適当な楽譜を制作ソフトに打ち込むことから始めました。最初に選んだ楽譜は「匠-TAKUMI-」という曲でした。アカペラではなく、ピアノ譜面です。これが、私にとってアレンジャーのスタートでした。
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音符の長さとか全くわからないまま、楽譜に書いている通りに音符を並べ、ただうつすだけに1週間以上かかりました。笑えますよね。でも、初めて自分が打ち込んだ楽譜から音がなった瞬間、鳥肌が立つくらい嬉しい気持ちになりました。
「俺、楽譜書いてる!!すげー」と一人暮らしのアパートで喜んでいました。
その後、アカペラのアレンジに挑戦し、最初はコードをただ並べただけの楽譜でしたが、それでも歌ってくれるメンバーのおかげもあり、今日までアカペラアレンジャーとして続けてくることができました。
なお、本格的にコードなど理論を学び始めたのは大学2年生-3年生の頃です。スケール、ダイアトニックコード、サブドミナント進行、ケーデンス、倍音などのさまざまな用語を勉強しました。ひたすら手書きでノートに書き込み、それを後輩にアウトプットして伝えることで、自分の中に落とし込んでいきました。
きっと、先に楽譜を書き始めたからこそ、私は楽譜制作に臨むことができたと思います。スポーツも一緒で、サッカーのルールを勉強してからボールを触るよりも、まずはプレイをしてみて、そこからルールを学んで行った方がイメージしやすいです。「音楽理論を知らないとアレンジできませんか?」とよく質問されますが、「もちろん知ることは大事ですが、まずやってみないとイメージできないですよね?」と答えています。
150本近く書いてみて

冒頭でも述べましたが、この13年間で150本近くの楽譜を書きました。毎回ベストな楽譜を書いても、次々と更新されて行くものだと感じています。でも、1つ1つの楽譜に思い出がありますし、変な表現で申し訳ありませんが、子供が巣立って行くような想いを正直感じています。気持ち悪いと思うかもしれませんね笑
音楽理論がわからなかった私が、
これだけの楽譜を書いた中で常に思っていたことは
「アレンジってやっぱり大変だな」
ということです。
「アレンジって楽しいよ!」とか「アレンジは勉強になる!」ってよく聞きますし、私も言います。でも本音は大変です。楽譜を書くときは常にストレスです。
「ストレスだったらやめればいいじゃん」
その通りです。ストレスだったら本来やめれば楽なんです。
それでも、そのストレスを乗り越えた先に、自分が作りたかったものが形になった瞬間を味わうことができます。その感覚は、13年前自分が初めて楽譜ソフトに打ち込んだ匠が、音としてパソコンから聞こえた瞬間と一緒です。そして、やっぱり自分の楽譜を歌ってもらえる瞬間って嬉しいです。さらに言えば、アレンジを褒められた時は、褒められた楽譜を自分で何度も聞き返したくなります。だから、アレンジャーとして続けてこれたのだと思います。
では、作っているときに何がストレスなのか・・・。
3つのストレス。

私にとっては下記の3つです。
✔楽譜が思いつかないストレス︎
✔自分の時間が奪われるストレス︎
✔孤独のストレス︎
楽譜が思いつかないストレス
アレンジで最も時間がかかるのは構成です。どのような楽譜を作りたいか考える時間です。楽譜を打ち込むのは作業なので、数をこなせば慣れてきます。歩きながら、料理を作りながら、シャワーを浴びながら、常にどのようなアレンジにするか考えています。思いついた!と打ち込んでみると、全然理想と違っているなんてこと多いです。逆に、雷が落ちたかのように、急にいいアレンジを思いつくこともあります。長い時は2週間近くこの葛藤と戦うこともあります。ストレスですよね。
自分の時間が奪われるストレス
構成2週間、打ち込み1週間〜2週間、スキャット入れ2日、最終確認と修正1日。これが大体の楽譜制作スケジュールです。スラスラとかけるときは、1週間で楽譜ができることもあります。ただ、アレンジャーは空いた時間で楽譜を書いています。私は、社会人なので仕事が終わってから楽譜を書いています。窓の満月で歌った「心の瞳」を制作しているときは、メンバーを夜中の3時くらいまで起こし、楽譜をチェックしてもらったこともありました笑 楽譜を作っている時間で、他の趣味や映画・ドラマ・漫画を見ることもできるでしょう。大学生だったらバイトを入れることもできるかもしれません。ストレスですよね。
孤独のストレス
アレンジは一人で作ることが多いです。そのため、いいアレンジを思いつたときに常に共感してもらえることはありません。逆に、構成に行き詰まったときに、一人で悩みを抱えることはザラです。「アレンジャーは孤独である」と言えるかもしれませんね。
これらのストレスはあくまで私の主観ですが、きっと同じようなことを思ったアレンジャーも多いと思います。
で、この文章は「アレンジャーはストレスが多いから、もっと他のみんなは気を遣え」なんて、くだらないことを伝えたい訳ではありません。逆に、そう言えるアレンジャーは凄いですね。私は嫌いですけど笑
伝えたいことの1つは先ほども述べたように、「ストレスを感じていても、その先に嬉しいことや感動を味わえるからアレンジは楽しい」ということと、2つ目は、「メンバー間で感じているストレスを理解しあって、それらを互いにフォローする環境づくりが大事」ということです。
ストレスの連続でも、仲間がいたから続けてこられた

なぜか、アレンジできる人・できない人みたいに分けるバンドが多いですが、その必要はないと思っていますし、「みんなでアカペラの楽譜を作り上げる姿勢」が私は大事だと思っています。
楽譜が思いつかないストレス
構成は、一人で考えるとかなり時間がかかります。ただ、みんなで話し合って、制作のヒントを導き出すことなら、音楽理論を知らない人でも十分できます。歌詞を読んで、どのフレーズが大事かを話し合ったり、曲のどの部分を盛り上げるか考えることは、楽譜を打ち込む作業を伴いません。
自分の時間が奪われるストレス
例えば、メロディー譜や和音の打ち込みを分担するだけでも、一人の負担を減らすことができます。あと、楽譜にコード名を打ち込んでくれることも、アレンジャーにとって非常にありがたいことです。
孤独のストレス
こればかりはなかなか仕方ないことかもしれませんが、たまにこうしてほしいと助言することは大事です。「孤独」に感じるのは、そもそも正解がないものに臨んでいるので、自分が進む道が正しいか悩み続けるからです。誰かが一緒に考えて支えてくれるだけでも、アレンジャーにとっては心強いことです。
一方で、ストレスを感じるのはアレンジャーだけではありません。バンドリーダーは、バンドの方針を決めることのストレス、日程調整のストレスがあります。それぞれには音とりのストレスがあります。考えればたくさん出てきます。
でも、世の中ストレスがないことで、楽しいことなんてあるのでしょうか。常に新しいものを更新していくことには、何かしらのストレスはつきものです。ストレスの連続とタイトルで書きましたが、ストレスの連続だったからこそ続けてこれた訳です。
ストレスにマイナスなイメージを持たないこと。そして、そのストレスを互いに少しでも軽くしてあげることが、いいバンドなのではないかと思います。
最後に
冒頭から何度もお話ししていますが、私はこの13年間ストレスの連続であっても、アレンジを続けてきました。それは「アカペラアレンジが大好きだからです」。うまくいかないストレスは、どんなシーンにもあります。そして、そのストレスを超えてきたからこそ続けてこれたのだと思います。
ただ大事なのは、そのストレスを互いに理解し合い、そして補い合う姿勢だと思います。私も、何度も仲間に助けられました。
互いに助け合う姿勢こそ、アカペラバンドに必要なものじゃないかと思います。アカペラアドベントカレンダー2021の一発目として、アカペラバンドに必要と思うことを書かせていただきました。